日本vsスペイン U19 準々決勝④ 〜選手起用とタイムアウト〜
Spain v Japan - Full Game - Quarter-Final - FIBA U19 Women's Basketball World Cup 2017
先日、世界トップ10入りを果たしたU19日本代表男子のHCをつとめるトーステン・ロイブルコーチが、選手起用とタイムアウトについてのクリニックを昨年おこなった。世界のスタンダードを知ることで、バスケットボールの原理原則がわかり、各チームの意図も見えてくる。今回の試合についても、ロイブルコーチが語るスタンダードと比較してどうか簡単に検証したい。
※クリニック内容については、下記のゴールドスタンダード・ラボ 片岡氏によるまとめが大いに参考になる。「U-19男子日本代表HCトーステン・ロイブル氏のタイムアウト・選手交代戦略 | ゴールドスタンダード・ラボ 」: http://goldstandardlabo.com/blog/2017/08/16/ebba-reports-timeout/
引用:1.Substitusions(交代について)より
欧州では少なくて8人、多くて11人で戦い、常にコート上では強度の強い攻防を要求している。1人当たり、20~25分のプレータイムをリミットと考え時間の配分を行っている。
◆今回の試合(両チームとも12人全員出場)
1)日本:MAX #12 S. Mawuli 24min
1Q(10) Full、2Q(8) 残り7分 out、残り5分 in、3Q(3) 残り7分 out、4Q(3) in 残り7分out
2)スペイン:MAX #8 I. Etxarri 26min
1Q(3) 残り3分 in、2Q(8) 残り5分 out 残り3分 in、3Q(7) 残り7分 out 残り4分 in、4Q(7) 残り7分 in
3)スペイン:MAX #10 P. Ginzo 26min
1Q(7) 残り3分 out、2Q(8) 残り8分 in、3Q(7) 残り3分 out、4Q(5) 残り5分 out
上記の3人が、各チームにおけるMAX出場だった選手である。最大でもスペインの2選手の26分間の出場となっている。出場した選手数も両チームとも12名であり、前述の引用記述と合致する。まさに選手起用における世界のスタンダードの中で、この試合が展開されたことが伺える。
また、#10の休ませ方は、クリニックで語られた「クォーターブレイクを有効に使い、選手を休ませる」方法である。逆に考えると、#10がスペインのキープレーヤーだというヒントになりはしないか。この試合に限れば、#10が秀でた数字は残していないが、実はそれが日本の勝因に大きく影響していたのかもしれない。
引用:5.いつタイムアウトを取るべきか?
タイムアウトは、決して相手チームに負けている、劣勢であることを意味するわけではない。決して、恥ではない。どのような試合でも問題は起きる。ゲームに対する良い感覚を失うこともある。タイムアウトの時間で、それを取り戻せばよい。
実はこの試合、日本は1回のタイムアウト(3Q)しか要求していない。それだけ日本が順調に点差を広げていけたことを表しており、つまり相手のゾーンや前線からのプレッシャーに対して、選手たち自身で問題解決ができていた証である。
◆日本のタイムアウト直前のプレーから
https://youtu.be/26l4JFU8Gz8?t=1h17m50s
また、1度だけ要求したタイムアウトの指示においても、(一瞬ではあるがビデオで映るので確認できる)インサイドに対するディフェンスの守り方1点のみに絞っていたように見える。これもまたロイブルコーチが話すように、最優先事項を適切にピックアップし、シンプルに伝える手法である。
結果だけ見れば、強豪スペインに割りとあっさり勝った試合に見える。しかし、このような選手起用やタイムアウトの世界スタンダードの観点から見ても、日本の選手やコーチ陣が原理原則に基づいた手法を的確に用い、勝機を逃さなかったことがわかる。
日本vsスペイン U19 準々決勝③ 〜リバウンド〜
Spain v Japan - Full Game - Quarter-Final - FIBA U19 Women's Basketball World Cup 2017
フィジカルで劣る日本が世界の強豪と戦う際に、勝敗をわけるポイントとして「リバウンド」がよくあげられる。しかし、バスケットボールは点数の取り合いであって、リバウンドの取り合いではない。重要なことは、ひとつのリバウンドをどのように得点に絡めるかだと考えている。
言い換えれば、日本の勝機はトランジションを制することで見えてくるはずだ。DRは5人全員が参加し、ORはセーフティーとリバウンドのバランスを取りにながら効率的に確保し、そのアドバンテージをOFやDFで生かしたい。特にG陣のリバウンド参加やC陣のプッシュスキルはポイントになる。
※補足すると「走るバスケットボール」が日本に必要だと言いたいわけではない。トランジションOF、トランジションDFの質こそ、日本にとっての最大の武器になる。そのためには、意図的に相手を嵌めるDFとDRで生じたアドバンテージを効率よくいかすOFが必要になる。この点については、後日まとめたい。
◆ 今回のスタッツ
Spain v Japan Boxscore - FIBA U19 Women’s Basketball World Cup 2017 - FIBA.basketball:
http://www.fiba.basketball/world/u19women/2017/2807/Spain-Japan#|tab=boxscore_statistics
スペイン:OR 21、DR 21、total 42(FG 27/75 36%)
日本:OR 14、DR 32、total 46(FG 36/71 51%)
シュートが落ちればリバウンドの本数は増える。スペインのORが多くDRが少ないのは、スペインのシュート確率が低く、日本のシュート確率が高かったゆえの現象ともいえる。日本のシュート確率が高い要因は、スペインがリングまわりのシュートを決めきれず、カウンターでの得点が相当数あったことだ。
図:スペイン シュートチャート3Q
決めるべきシュートを演出するのがスタッフの責任であって、それを決めきるのは選手の責任である。スペインは、リバウンド総数の半分がORにも関わらず、FGが上がらなかったことは首脳陣の頭が痛いところだろう。やるべきことはやっているが結果が出ない状況は迷いを生む。日本がつけ入った隙はまさにそこであった。
日本vsスペイン U19 準々決勝② ~試合の流れ〜
Spain v Japan - Full Game - Quarter-Final - FIBA U19 Women's Basketball World Cup 2017
1Q
高さとフィジカルのスペインとスピードと動きで高い質を誇る日本。スペインはPnRを起点にしながら、F陣のペイントアタック。日本は、コンビネーションプレーで、相手のオーバーDをうまく誘う。日本はRを支配されながらも、R後のDFで粘りを見せ簡単にスコアさせない。21-13で日本8点リード。
2Q
スペインのアンスポ後に、3-2ゾーンを仕掛けるスペイン。しかし、コミュニケーションミスから自滅し、日本はアウトサイドからスコアを重ねる。終盤、スペインはインサイドを強調するも流れをつかめない。ゾーンの仕掛けが明暗をわけた2Q。46-25とリードを21点差に広げて折り返す。
3Q
スペインはオールコートでプレッシャーをかけ、日本のTOを誘発。しかし、奪いとったボールをスムーズにスコアすることができない。逆に日本がカウンターからスコアし、点差を広げる。オールコートDが裏目に出たわけではないが、日本が慣れたところでスペインは次の一手がほしかった。
4Q
プレッシャーをかけるスペイン。それをカウンターでかわす日本。日本もミスがないわけではないが、点差が気持ちに余裕をもたせるのか大崩れしない。点差を守りきり、95-71でゲームセット。日本は常に先手を取り、「試合運び」の勝利。
◆ recommendation
素材は素晴らしく、これからも注目したいスペイン。2Q仕掛けたゾーンから、終始後手にまわってしまった。結果論だが、ゾーンや前線からのプレッシャーDは適度に、がっぶりよつの横綱相撲でも勝てた試合ではなかったか。F陣のフィジカル差は圧倒的で、試合終盤を見越し相手ファールを重ねることを貫いてもよかったはずだ。
一方の日本は、相手の出方に対して見事にカウンターを食らわせた形となった。バタついた試合になりそうな中、G陣のコントロールとそつのないあわせはグレートだった。途中、萩原HCがセンターに対する詳細なDの指示も的確に遂行するなど、遂行力の高さを伺わせた。遂行力こそ、日本の特徴であり、勝利の鍵だと考えている。
日本vsスペイン U19 準々決勝 〜今週の一戦〜
今週のリコメンドゲームはこちら!!
強豪スペインに大差をつけての勝利したこの試合。何が要因だったのか?再現性があるのか?などについて自分なりに深くみていきたいと思います。